抄録
ボタンをとめる、蛇口を回すなど、我々は生活をする上で様々な動作が必要である。しかし視覚に障害を持つ子どもにとって、これらの生活動作を見よう見真似で習得することが困難であり、晴眼児に比べ経験する機会も少ない傾向にあるため、動作によっては習得が難しいものがある。そこで本研究は視覚障がい児が楽しく遊びながら様々な生活動作をスムーズに習得する手助けとなる玩具の創出を最終的な目標とする。本稿では玩具の制作に際し、視覚障がい児(18名)と晴眼児(27名)の保護者を対象に、24種類の生活動作のうち、習得難易度及び経験の有無などについて質問紙による調査を行い、視覚に障害がある事でより習得が困難になる動作や、経験の機会を得にくい動作を明らかにした。特に「ファスナーの上げ下げ」「ひもを丸結びする」などの動作は視覚障がい児にとって習得が難しく、空間的な認知や機構の理解などを促す工夫の必要性が示唆された。また「ドアノブを回す」「はさみで紙を切る」などは経験の機会が得にくく、玩具での遊びを通して、基礎的な動作の習得を行うことが有効であると考えられる。