本研究では,カーネマンの提唱するピーク・エンドの法則がUX(User Experience)に適応できる理論なのかを検証する.スマホアプリの利用経験における満足したエピソードと不満足であったエピソードについて女子大学生29名にアンケート調査を行った.そして,エピソードに沿って記述してもらった気持ちの変化得点(7段階評価)について,ピーク値(最良),ピーク値(最悪),そして,エンド値(終末局面)の3得点を算出し,重回帰分析を用いて総合満足点への影響を検証した.結果,Y=+0.74(エンド値) +0.25(ピーク値(最悪))-0.1(ピーク値(最良))という重回帰式が得られ,VIFはいずれの項目も5以下であり,修正R二乗は8割以上で信頼性が担保できるものであると判断した.このような結果から,いかに終末局面の印象を良いものにし,最悪な印象をいかに与えないか,が総合満足点を向上させるための優先的な事項であることがわかった.そして,UXにおけるピーク・エンドの法則はピーク値(最良)ではなく,ピーク値(最悪)とエンド値が総合満足点に大きく寄与している式が得られたことから,その有用性を明らかにできたのではないかと考える.