筆者らは2019年の京都・祇園祭において,祇園囃子を演奏する「囃子方」が,山鉾の舞台に上がって演奏する幕間に,出演準備や訪問者との交流を行う休憩所の設計,設営を行うこととなった。山鉾に隣接して道路上に設置される施設であるため,設計にあたっては,利用者である囃子方にとっての利便性を担保するだけでなく,山鉾との意匠的調和を保ち,混雑する観覧者の通行を妨げないことが前提とされた。また,山鉾の組み立てが完了して宵山期間に入る直前,および宵山期間を終えて翌日の巡行に向けた準備がなされる短時間に,それぞれ迅速な設営と撤去が求められるなど,意匠,性能,構法などの各側面にわたる検討を要した。筆者らはこうした休憩所を木製テントで実現することを構想し,主要骨格をはじめ,各構成部材の選定,搬送,組立手順などについて検討,試作を重ねた結果,実際の祭礼期間中に現地での設営と保守を行い,大きな支障なく休憩所としての機能を実現できた。本稿ではこの木製テントについて,その意匠的特徴や構造的特性に触れつつ,祇園祭のみに限らない利用の可能性や,改良点などの課題について粗述したい。