欧米では大手金融機関各社が長年にわたりアート支援にコミットし、民間による支援の牽引役を果たしてきた。アートを通じて社会や地域の発展に寄与することが、社員の意識を変え企業イメージを高め、ひいてはビジネスにプラスになるという成功体験を積み重ねてきたからと言える。一方、日本の金融機関にはその様な存在感がない。本研究では、日本の金融機関が取り組んでいるアート支援プロジェクトの背景、動機、目的、イニシアチブの分析を行うことで、金融機関によるアート支援の現状と展望を考察する。アート支援は時代背景と各社それぞれの課題を反映している。最近の事例では、社会貢献から踏み出し自社の企業戦略にアート効果を取り入れようとする動きがうかがえる。実施にあたっては、経営トップのリーダーシップとコミットメントが重要であるが、社員からの提案が経営トップの問題意識と上手く噛み合った好事例もある。日本の金融機関に足らないものは成功体験の積み重ねである。従来のビジネスモデルが通用しない不確実で曖昧な状況を前にして、日本でもアート思考への関心が高まっており、日本の金融機関がアート支援に取り組み易い環境が整いつつあると思われる。