抄録
本研究の目的は、放牧風景画像における「動物」の要素が人の印象や感情状態、自律神経系活動に及ぼす影響を検証し、自然風景における「動物」の要素が持つ効果の解明に向けた一助とすることである。大学生40名を2つのグループに分け、2種類の風景画像(ヒツジ有/ヒツジ無)のいずれかを呈示した。呈示の前後には、心理的な影響を評価する指標として「一般感情尺度」(小川ら,2020)及び放牧風景に対するSD法を用い、生理的な影響を評価する際には自律神経系活動を指標として用いた。結果から、本研究で用いた放牧風景の画像は、ヒツジの存在の有無に関わらずNA得点(否定的感情)の減少とCA得点(安静状態)の増加が認められ、心理的な沈静効果をもたらすことが示唆された。他方で、ヒツジが存在する画像については、ヒツジが存在しない画像と比較して「かわいい」や「触れてみたい」といった主観的評価が高くなる傾向が見られ、有意な交感神経活動の低下が確認されたことから、ヒツジの存在が風景画像に対する印象や自律神経系の活動に影響を与える可能性が示された。以上の結果は、放牧風景画像における動物の要素が人の心理的・生理的側面に影響を及ぼすことを示唆している。