抄録
杖は歴史的にステータスシンボルとして扱われてきた。しかし、今日では衰えの象徴と見なされることが多く、その結果、杖を使用することが恥ずかしいというイメージが生じているように見受けられる。このイメージを持つことは、杖が本当に必要になった際の抵抗となる可能性がある。そこで本研究は、新たな杖の役割を明らかにし、誰もが積極的に持ちたくなる杖を製作することにより現在持たれる杖に対するイメージを軽減させることを目的とした。二度の体験調査を通じて,杖には歩行のリズムを作り出す役割と前を向かせる役割があり,それが散歩中の創造性向上に活きると考察した。またクリエイティブ職には創造性向上のために散歩を習慣とする人が多く見られたことから「クリエイティブ職の人々が散歩から得る効果を向上させる杖」をコンセプトとした。その後デザイン要件について検討し,創造性向上に必要な要素を有しながら衰えのイメージを感じさせない形状の実現を目指した杖と,パーソナライズ性を備え散歩をする前から表現活動を行うことで創造性の向上を図った杖の2 本の杖を提案した。