デザイン学研究
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櫃にみるデザインの構造 : 櫃にみるデザインの構造4
宮内 哲
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1991 年 1991 巻 85 号 p. 83-90

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抄録

本稿は,櫃(Chest)を対象に,そのデザインにかかわる諸要因と相互の関係を検討したものである。1.デザインの仕組みを時系列でとらえると,要求(Needs)にもとづき形態が形成される段階とその形態を使用する段階からなり,前者を狭義のデザイン,全体を広義のデザインと規定する。2.形態形成及び使用段階において,さまざまな要因が作用していると考えられる。それらをブラック・ボックスとすると,内容として,これまでの検討から自然環境,技術体系,生活様式,社会構造,精神構造などがあげられる。社会構造は櫃という用具の所有と使用の基盤であり,精神構造は財貨の確保に対する観念や生活空間と用具に関する美や秩序の感覚などである。3.諸要因の質は時代や民族,文化によって異なるところから,ブラック・ボックス内に層状にただよう雲になぞらえた。櫃のデザインは,要因と実体との間にゆるやかな対応関係をもつ,雲の様態に似たやわらかな構造としてとらえられる。

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© 1991 日本デザイン学会
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