デザイン学研究
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形態論 : II.知覚の古典力学モデル
小川 一行
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1993 年 1993 巻 95 号 p. 31-36

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抄録

感覚→知覚の写像法則を定式化することによって,知覚の特性をニュートン力学で記述できることを示した。この試みで得た主要な結果は,(1)知覚の生成にとって本質的な機能が脳における記憶とその並列分散処理(PDP)であることを論理的側面からの分析によって明らかにし,(2)ニュートン力学が知覚の産物であることを証明し,(3)前二つを足掛かりとして視覚を例として形態情報の収集と把握の機構をハミルトン形式に納めたことの三つである。(3)の内容は今後の研究方向を定める上で重要と考える。それは次の通りである。先ず,目のサッケード運動に対するニュートン方程式を積分してハミルトン関数Hの表現を得る。次にその定常値としてのエントロピーが,ハミルトン主関数Sに相当する統計分布を持つことを示した。理論の要点は擾乱を受けている知覚系の状態間遷移確率が具体的に得られる所にある。結果を橋梁の観照に関する杉山の研究に照合し合致を確めた。デザイン分析の過程で話題となる固有値問題の知覚力学的意味も亦この理論により即物的に議論可能となる。

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© 1993 日本デザイン学会
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