デザイン学研究
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書体「ファット・フェイス」出現の要因
石川 重遠
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1995 年 42 巻 3 号 p. 17-24

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抄録

世界最初の近代的広告用活字書体とされるファット・フェイス出現の要因をそれに直接関わる活字鋳造,印刷,印刷媒体などに探り,下記のように明確化した。(1)イギリスにおいて19世紀初頭には掲示伝達媒体が定着し,ノウティス,ビルが多数使用された。この見出しに訴求力のある大形の書体が求められた。(2)19世紀初頭には世俗的読み物や雑多な端物印刷物の量が増え,見出しやタイトルなどに目立つ,新しい書体が求められた。(3)18世紀後半からフランスを中心としたモダンな新書体活字開発ラッシュと産業革命の革新的環境は,イギリスの端物印刷用活字鋳造家に大きな刺激を与えた。(4)モダン・フェースの特徴を大型活字に取り込み,ファット・フェイスに結晶させたロバート・ソーンの産業革命時代の活字鋳造家にふさわしい創造性と先見性も重用である。

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© 1995 日本デザイン学会
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