デザイン学研究
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42 巻, 3 号
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  • 両角 清隆, 森川 博, 杉山 和雄
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 1995/09/29
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    これまでの研究によって明らかになった「わかりやすさの因子」の重要性を確認するため,因子を実験計画法によって組み合わせ,ビデオテープデッキ(VTD)のシミュレーションを作成し,検証した。その結果,次のことが明らかになった。1)操作の対象を手順に制約されず選択できるようにすることは,わかりやすさに効果がある。手順に制約がある場合は,その制約の関係性を表示することで障害を回避できる。2)処理を自動化することは,必ずしも操作のわかりやすさに効果があるとは言えない。むしろ,操作者が手動で直接操作を行い,その過程を認識することが,障害の対処等においてはよい結果につながると言える。また,操作子間の関連性を表示すれば,より操作性が上がる。3)ユーザーの分節(操作のくくりの概念)に対応した操作子を空間的に配置すると,操作子の増加によって一見複雑な印象を与えやすいが,実際の操作では障害を低く抑える事ができる。
  • 飯島 祥二
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 3 号 p. 11-16
    発行日: 1995/09/29
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    建築室内の色彩は,「拘束性」を有し自由度が小さい。それは,室内空間の色彩が人間を包むものであり,「落ち着き」が基本であるからである。本研究の目的は人物の膚色の評価を通し,環境視覚的に評価される室内空間の色彩を,間接的に評価する方法を検討することである。評定実験は21色の背景色に3人の人物を写し込んだスライド刺激を用い,SD法を用い,18名の被験者で行った。その結果を因子分析し,3つの因子を抽出した。第一因子の「評価性」,第二因子の「健康性」,第三因子の「親近性」である。第二因子である「健康性」の因子得点は,背景色の明度と正の相関(R=0.543),彩度と負の相関が認められた。全体的傾向として,高明度・低彩度の背景色で「健康性」の因子得点が高く,膚色が健康的に見える。次に,室内の色彩調査結果から,各色の使用頻度を得て,その頻度と「健康的」の因子得点との相関を求めると高い正の相関係数が得られた。以上の評定実験より室内色彩の「拘束性」を合理的に解釈し,膚色評定を通して室内色彩の評価を行なう方法を検討した。
  • 石川 重遠
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 3 号 p. 17-24
    発行日: 1995/09/29
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    世界最初の近代的広告用活字書体とされるファット・フェイス出現の要因をそれに直接関わる活字鋳造,印刷,印刷媒体などに探り,下記のように明確化した。(1)イギリスにおいて19世紀初頭には掲示伝達媒体が定着し,ノウティス,ビルが多数使用された。この見出しに訴求力のある大形の書体が求められた。(2)19世紀初頭には世俗的読み物や雑多な端物印刷物の量が増え,見出しやタイトルなどに目立つ,新しい書体が求められた。(3)18世紀後半からフランスを中心としたモダンな新書体活字開発ラッシュと産業革命の革新的環境は,イギリスの端物印刷用活字鋳造家に大きな刺激を与えた。(4)モダン・フェースの特徴を大型活字に取り込み,ファット・フェイスに結晶させたロバート・ソーンの産業革命時代の活字鋳造家にふさわしい創造性と先見性も重用である。
  • 深水 義之, 吉田 登美男, 伊藤 明, 小谷津 孝明
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 3 号 p. 25-32
    発行日: 1995/09/29
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    図形の周辺にはコントラストを強調する効果があり,横瀬はこれを心理ポテンシャルと命名した。前報告では横瀬の実験が正確に行われたとの前提で,横瀬の提案した理論式を計算して彼の分布図を再現しようと試みた。しかし,これをうまく説明するには,いくつかの修正が必要であることを報告した。本報告では,横瀬の実験の正確さを確認することが第1の目的であり,さらに彼の行った単純図形以外に種々の図形についても実験を行い,その現象を捉えることが第2の目的である。これらの実験により,図形周辺のコントラストの強調の現象が,全ての図形において再現された。しかし,今回の実験により,横瀬のデータに見られなかった2つの現象が確認された。1)ポテンシャルは図形の近傍にのみ分布する。2)図形の固有の特徴のあるところにポテンシャルが集中し,かつ途中で切断されることがある。以上の結果から横瀬の実験値と理論式の妥当性について問題があると考える。
  • 原田 利宣, 森 典彦, 杉山 和雄
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 3 号 p. 33-40
    発行日: 1995/09/29
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    デザイナーはテープドローやカーブ定規を用いて自転車の曲線(面)を設計しているが,その設計された曲線がプレス金型で成形された場合,その曲線の再現性については,未だ定式化はされていない。そこで,本報では,それら曲線の各種物理的性質に関する考察を行い,その曲線の再現性に影響を与える本質的な問題を抽出することを目的としている。まず,いくつかの解析事例を通して,曲線の物理的性質を考察した結果,曲線の物理的性質である曲げエネルギーやせん断変形エネルギーは,曲線の曲率変化の"滑らかさ"と深く関連していること,また,プレス金型データにおける曲線の曲げエネルギーやせん断変形エネルギーが,鉄板をプレス成型する際の曲線の再現性に深く関連があることが推測された。さらに,曲線の"滑らかさ"とは,自己アフィン性に深く関与していると考えられ,実車のキーライン分析においても,自己アフィン性が局面設計時の重要な因子であることが推察された。
  • 日野 永一
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 3 号 p. 41-48
    発行日: 1995/09/29
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    1901年に,日本図案会と大日本図按協会という二つのデザイン団体が,東京で同時に結成された。これらの団体は,アール・ヌーボーの影響を一つの契機として発足したものであり,また日本では初めての近代的なデザイン団体の結成でもあった。しかし,背後には人間的な確執や同窓関係なども存在していた。日本図案会は展覧会を通じ,大日本図按協会は雑誌『図按』の刊行を通して,これらの会は社会にデザインの意義を訴えた。多くのデザイナーたちは,このデザイン運動によって,当時の旧態依然とした状態からの離脱と飛躍を望んでいた。しかしこれらの会の活動も,内部の協力と社会からの十分な支援が得られず数年で不活発となり,特に二人の指導者が没するに及んで消滅をした。
  • 原田 利宣, 森 典彦, 杉山 和雄
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 3 号 p. 49-58
    発行日: 1995/09/29
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本誌では,コンセプトや要求仕様から自動車の"構え"を推論するデザイン支援システムの構築を試みた。ただし,本論では,推論の途中段階を明確にできるファジィ推論を推論部として採用した。さらに,既存の研究では手つかづだったそのファジィ推論段階で生じた不完全な推論解から最適解を得るための手法の研究に重点をおいた。不完全な推論解から最適解を推論する部分には,ニューラルネットワークの一種であるホップフィールド型ニューラルネットワークを用いたシステムと遺伝的アルゴリズムを用いたシステムの2つを構築し,それらのシステムの比較考察を行った。その結果,ホップフィールド型ニューラルネットワークを用いたシステムは,事前の"構え"が不整合を起こす場合の知識を獲得する必要がない代わりに,推論解が一つしか得られないことが確認された。さらに,遺伝的アルゴリズムを用いたシステムは,"構え"が不整合を起こす場合の知識が事前に抽出されてなければならないが,可能解すべてを得られることが確認された。
  • 上北 恭史
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 3 号 p. 59-68
    発行日: 1995/09/29
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,居住者の生活観に伴って構成される住空間原理に着目し,社会主義社会のもとで建設が進められている中国の都市集合住宅の住空間構造の特徴を明らかにしようというものである。この研究を通して,中国都市住宅と住生活様式との間に関する基礎的知見を得ることを最終目標としている。本論文では,中国の伝統的住宅にみられる住空間原理の分析を通して得られた空間特性を視点に,近代から解放直後の現代の集合住宅にわたり,住空間の構造の変容を把握することを目的とした。その結果,伝統的住宅の住空間構造は,社会的階層の縦軸と家族的階層の横軸で構成されていることを指摘した。そして,近代から現代の集合住宅にわたって,社会的階層の空間は,家族内の公的空間に変容していくが,都市生活により核家族化したことによって高まったプライバシーの確立と,套間による中国の伝統的な曖昧な性格の空間が残ることにより,家族内私的空間が徐々に確立しつつある変容過程の構造としてとらえられることを確認した。
  • 望月 史郎
    原稿種別: 本文
    1995 年 42 巻 3 号 p. 69-78
    発行日: 1995/09/29
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,1953年から1990年までの新聞広告を主たる資料として,戦後日本における電気掃除機変遷の大要を解析したものである。広告量,吸塵性能,価格,ネーミング,ヘッドラインなどの項目ごとに変遷過程をたどり,普及率,保有数量,国内出荷台数などの統計資料と関連づけて考察を加えた結果,電気掃除機の変遷過程の4区分と,変遷解析の視座を下記の通りに明らかにした。(1)第1期はホウキから電気掃除機への転換を呼びかけつつ製品の改良を試みる,市場開拓期と位置づけられる。(2)第2期は,多様な改良を重ねて,企業間の競争を本格化させながら,普及を急速に進める普及・急成長期である。(3)第3期は,成長過程の軌道を修正しつつ,生活提案型計画を模索する安定成長期と見なせる。(4)第4期は,生活提案型計画を充実させ,脱成熟化を図る付加価値期である。(5)変遷解析の視座は,基本機能,操作性,付加機能,影響削減,造形の5側面に分類できる。
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