デザイン学研究
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中国の伝統的住空間モデルの原理と近代化による住空間変容 : 中国都市住宅における住空間特性の研究 1
上北 恭史
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1995 年 42 巻 3 号 p. 59-68

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抄録

本研究は,居住者の生活観に伴って構成される住空間原理に着目し,社会主義社会のもとで建設が進められている中国の都市集合住宅の住空間構造の特徴を明らかにしようというものである。この研究を通して,中国都市住宅と住生活様式との間に関する基礎的知見を得ることを最終目標としている。本論文では,中国の伝統的住宅にみられる住空間原理の分析を通して得られた空間特性を視点に,近代から解放直後の現代の集合住宅にわたり,住空間の構造の変容を把握することを目的とした。その結果,伝統的住宅の住空間構造は,社会的階層の縦軸と家族的階層の横軸で構成されていることを指摘した。そして,近代から現代の集合住宅にわたって,社会的階層の空間は,家族内の公的空間に変容していくが,都市生活により核家族化したことによって高まったプライバシーの確立と,套間による中国の伝統的な曖昧な性格の空間が残ることにより,家族内私的空間が徐々に確立しつつある変容過程の構造としてとらえられることを確認した。

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© 1995 日本デザイン学会
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