抄録
本稿は『ステューディオ』誌創刊者チャールズ・ホームが日本に関する記事(1893-1901)を分析し、創刊者の視点を明らかにし、掲載の意図を考察した。日本に関する記事18編は、伝統芸術の領域に関する記事(9編)、伝統芸術の技法に関する記事(2編)、伝統芸術の作家に関する記事(2編)、訪日した西洋人画家に関する記事(5編)に大別される。ホームは日本に関する記事の主要な執筆者であり、その編集のみならず、自ら伝統芸術の特質を解説することに意欲的に取り組んでいた。執筆者の多くは訪日経験と日本の伝統芸術に関する専門知識を有しており、芸術全般に及ぶ「用と美」、その歴史や生活との密接な関わり、明治以後の伝統性の衰微などに言及していた。そして、日本の伝統芸術は西洋の芸術が学ぶべき手本とされた。ホームは『ステューディオ』誌において、日本の芸術をイギリスで展開していたアーツ・アンド・クラフツ運動などに対する指針として掲載していたと考える。