デザイン学研究
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50 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 工藤 芳彰, 宮内 ★
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は『ステューディオ』誌創刊者チャールズ・ホームが日本に関する記事(1893-1901)を分析し、創刊者の視点を明らかにし、掲載の意図を考察した。日本に関する記事18編は、伝統芸術の領域に関する記事(9編)、伝統芸術の技法に関する記事(2編)、伝統芸術の作家に関する記事(2編)、訪日した西洋人画家に関する記事(5編)に大別される。ホームは日本に関する記事の主要な執筆者であり、その編集のみならず、自ら伝統芸術の特質を解説することに意欲的に取り組んでいた。執筆者の多くは訪日経験と日本の伝統芸術に関する専門知識を有しており、芸術全般に及ぶ「用と美」、その歴史や生活との密接な関わり、明治以後の伝統性の衰微などに言及していた。そして、日本の伝統芸術は西洋の芸術が学ぶべき手本とされた。ホームは『ステューディオ』誌において、日本の芸術をイギリスで展開していたアーツ・アンド・クラフツ運動などに対する指針として掲載していたと考える。
  • 工藤 芳彰, 宮内 ★
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 11-20
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は『ステューディオ』誌創刊者C・ホームの編集活動を精査し、彼の芸術に対する理念を明らかにする一環として、1902年から1915年にかけて同誌に掲載された日本に関する記事を分析した。1900年代の記事のほとんどは、伝統芸術の領域や技法に関するものと、絵画芸術の現状に関するものであり、西洋人によって執筆されていた。1910〜11年には日英博覧会に関連し、美術と工芸の現状に焦点をあてた記事が連続的に掲載された。それらのほとんどは原田治郎ら日本人によるものであった。その後、原田は日本に関する記事の主要な執筆者となり、文展の出品物などを例示しつつ、日本の芸術界の現状を報告し続けた。日英博覧会を契機として、ホームは原田を執筆者に起用し、日本の伝統芸術がどのように変革していくのかを追い続けた。このことは、異文化受容に長けた日本の伝統芸術の特質とその成果を、西洋の美術やデザインの指針とすることを意図していたと考える。
  • 李 廷美, 冨江 伸治
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 21-30
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、公共図書館の児童部門における子どもと親等による家族利用のグループ行動に着目したものである。特に本研究においては、親子が児童部門で相互に同伴利用を行う場面を取り上げ、その行為が行われる「集まる場所」での着座利用の状況について明らかにし、児童部門の平面構成及び閲覧スペースの計画に資する知見を得ることを目的とするものである。調査は、児童部門の異なる平面型をもつ中規模の公共図書館3館で子どもに同伴する家族を対象とする「行動追跡観察調査」を通して行った。その結果から、1)家族の同伴利用型は大きく2つのタイプ、すなわち親子の'付添い利用型'と'個別利用型'に分けられる。 2)児童部門の配置型別に形成される家族の「集まる場所」の分布について示した。 3)家族の「集まる場所」におけるグループ構成による着座利用の状況とその利用特性について建築計画論の視点から考察できた。
  • 石丸 進, 石村 真一
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 31-40
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    1)中国や韓国そして日本の家具史の中で,家具用材の特性と加工技術が家具文化形成の主要な要素になっている。その中心的な用材がケヤキである。2)ケヤキの材質は産地や個体により差があるが,地産地消材で,紋理(杢)が明瞭で美し<,色艶に富み,木質が比較的重くて硬いが切削加工はそれほど困難ではない特性を有する。3)明式家具の発祥地は蘇州を中心とする江南地域である。そこで生産されたケヤキ家具は明式家具の源流である。4)中国のケヤキは,非硬木に属するが硬木として扱われ,4種類を(台湾欅を含む)産出している。家具用材としては「大葉欅」が使用されている。日本のケヤキは中国では「光葉欅」と呼ばれ,大葉欅より軟らかい。
  • 大森 峰輝
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 41-46
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿では、住宅模型と人形・家具等の玩具類を用い、住空間利用イメージと構成能力の分析を試みた。加えて、箱庭療法の考え方を応用した既往研究により得られた結果との比較を行うことにより、その分析に玩具類を用いる可能性について検討した。その結果は、以下のようにまとめられる。1)提示された住空間に対して瞬時にその利用イメージを想定できる女児がいた。その一方、玩具配置をしながら試行錯誤を繰り返すことによって利用イメージを徐々に固めていく女児もいた。2)女子学生に比べ、女児は住空間に配置した玩具類の点数が多かった(人形、雑貨類等を多<使った)。また、それらを不適切と考えられる場所に配置した女児もいた。3)住空間構成玩具を用いることにより、児童固有の空間表現等を明らかにできる。また、児童の住空間利用イメージと構成能力を探る上で玩具を利用することが可能である。
  • 大森 峰輝, 藤谷 幸弘
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 47-52
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿では、性差と年齢差の観点からみた空間認知特性についての分析を試みた。具体的には、CG映像で構築された住空間探索時における男女学生と高年者の認知特性を比較した。結果は、以下のようにまとめられる。1)男女学生被験者グループの空間認知に関する精度は、概ね探索時間(回数)に伴って正確さを増していった。しかし、高年者の認知精度は横ばい状態に近いものであり、認知にかなりの困難を伴ったことが示唆された。2)女子学生及び高年者は、居室面積を過少評価する傾向があった。また、間違って認知した情報をなかなか修正することができなかった。3)高年者は方向感覚をつかみづらいと感じるとともに、ゲーミング・シミュレーションに対する苦手意識を有していた。また、記憶力の低下による影響も示唆された。このため、認知精度が極めて低かった。
  • 佐藤 陵, 岩橋 幸彦, 松岡 由幸, 平井 正之
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 53-60
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    筆者らはこれまでの研究で,車椅子車載システム搭載車両における車椅子利用者の乗り心地改善を目的として,人体一車椅子系の振動と乗り心地評価の関連性を明らかにした.本研究は,アクチュエータを用いたアクティブ型免振装置を開発し,この免振装置の乗り心地改善効果を振動面と感性面の双方から検証することを目的とした.車両側への振動対策として,系の振動に対するアクティブな制御が可能であるアクチュエータを装備した免振装置を採用した.この免振装置は,人体振動の低減に効果的な箇所である車椅子後輪軸に接続するように設計した.また,後輪軸の加速度および位置を対象とした制御方法を構築した.この免振装置を用いて実車走行実験を行い,振動および乗り心地評価を測定した.その結果から,免振装置の稼動により,1-8Hzの広周波数域において人体振動は一様に低減し,乗り心地評価の向上が示された.これにより,免振装置のアクティブな効果を確認し,乗り心地改善効果を検証することができた.
  • 柿山 浩一郎, 原田 昭
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 61-68
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文は、遠隔操作鑑賞ロボットを使用して、鑑賞操作行動と興味度の高まりの関連性の解明を目的とした研究である。本研究では、一連の鑑賞行動には「鑑賞している状態」と「鑑賞していない状態」の2つの状態があるという仮説をたて、それらの区別を試みた。また、鑑賞行動のメカニズムを解明するためには、鑑賞操作行動の記録に加え、鑑賞者の興味度の変化を記録することが必要不可欠であるとし、刻々と変化する鑑賞時の興味度の変化を時系列的に記録した。時系列的な鑑賞者の鑑賞操作行動と興味度の関連を数量化理論1類にて分析した結果、画像をクローズアップし、興味度が高まる状態を「鑑賞している状態」と定義づけると、その操作要素として「カメラチルト(縦振り量)」「カメラパン(横振り量)」があげられ、逆に「鑑賞していない状態」の操作要素としては「ロボットの位置(移動)」「ロボットの方位(回転)」を挙げることができた。
  • 町田 俊一
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 69-78
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    浄法寺漆器は、古くから、青森県との県境に位置する岩手県浄法寺町を中心とする地域でつくられてきた漆器である。かつては、東北地方のなかでは有数の規模の漆器産地にまで発展した。しかし、浄法寺漆器は世界大戦後に衰退し、昭和30年代には消滅してしまった。この産地の壊滅状態は約20年間統いたが、昭和50年代に、浄法寺漆器再興の運動が起こされた。筆者は、浄法寺漆器の復興計画へ参画し、この漆器を現代生活で使用できる日用品として開発を行ってきた。以前につくられていた製品の復活のみならず、現代の日用品として生活様式へ適合させることが大きな課題であった。この課題に対しては、問題を解決するための手法としてのデザインが大きく貢献できると考えられ、漆器製造の技術だけでなく、新たなデザインの作業が総合的な観点から展開された。本稿では、浄法寺漆器のデザイン開発を通して得られた伝統的工芸品とデザインの関係に関する知見について報告する。
  • 町田 俊一
    原稿種別: 本文
    2003 年 50 巻 4 号 p. 79-84
    発行日: 2003/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    これまでの伝統的工芸品産業が、デザインを取り入れることができなかったことについては、産地が形成されてきた経緯のなかで、高度な社会分業体制が構築され、新たな業務に対する柔軟性を失ったことが原因として考えられる。また、明治以来、製造業の社会的地位が低く見られるようになり、職人が手作業労働者に位置づけされたために、職入のなかからデザイナーを養成する余裕もなかったことも要因にあげられる。デザインを取り入れるためには、現在の製造システムを大幅に変革し、合理化する必要性があるが、その効果は大きいことが示唆された。それは、製品の価値を拡大するだけでなく、製造従事者の社会的地位や労働の魅力を向上し、伝統的工芸品産業自体を再生するものである。また、デザインを産地内に定着させるためには、産地の特性に適したカリキュラムを有する教育の場が必要であり、地方公設試験研究機関や大学などがその役割を担うことが期待される。
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