デザイン学研究
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費孝通にみる地域発展理念 : 内発的地域発展論に基づく地域振興に関する再検討
楊 紅植田 憲宮崎 清
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2007 年 54 巻 3 号 p. 95-104

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抄録

本小論は、費孝通の実証的地域発展研究論である『中国農村の細密化-ある村の記録1936〜82』および『江南農村の工業化-"小城鎮"建設の記録1983〜84』を主たる資料として、「内発的」地域発展の理論と主張を再検討したものである。費孝通は、終生、「志在富民」を学術研究の目標として追求し、実地調査を基礎に据えて、中国における貧困地域の地域振興と発展に有意義な主張と実践を行った。その地域振興理念は、今日、国内外で大規模に行われている「外発的」地域開発に対峙する「内発的」地域振興の様態を示したものとして、重要な意義をもっている。本小論においては、以下の4つを、費孝通の「内発的」地域振興理念を構成する基本理念として抽出・考察した。(1)「志在富民」を目的とする地域振興、(2)「地域の固有性」を基盤とした地域振興、(3)「地域に根ざし、地域に還元する」という地域の伝統文化思想を尊重した地域振興、(4)「地域経済の協調的発展」をめざした地域振興。これらの費孝通の指摘は、地域が自律的・自立的に発展していくための基本的指針として、「内発的」地域発展に多くの示唆を内包している。

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© 2007 日本デザイン学会
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