デザイン学研究
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54 巻, 3 号
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  • 藤田 良治, 山口 由衣, 椎名 健
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 3 号 p. 1-8
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究では撮影技法によって作られる映像の動きに着目し,映像素材におけるカメラムーブメントの違いが視聴者に与える心理的影響を明らかにする実験を行った.6種類のカメラムーブメント(ズームアップとズームバック,左パンと右パン,ティルトアップとティルトダウン)と4種類の情景カテゴリー(図形,自然,人工,人間)を組み合わせて24映像を製作した(6カメラムーブメント×4カテゴリー).この映像を,48名の被験者に呈示し印象評価を求めた.各項目の回答から5因子解(「好感度」「規則度」「活動度」「親和度」「インパクト度」)を得た.各因子の標準因子得点を用い.カメラムーブメント(6)×カテゴリー(4)の2要因分散分析を行った.その結果,それぞれのカメラムーブメントは視聴者に異なる心理的影響を与えることが明らかになり,視聴者に好感度やインパクトのある映像を製作するためには,撮影技法としてのカメラムーブメントを適切に選択することの重要性を示した.
  • 玉垣 庸一, 宮崎 紀郎, 小原 康裕
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 3 号 p. 9-18
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    よく知られた伝統的なカラーオーダーシステムの一つであるオストワルトシステムは一般に混色系として分類されている。しかし本稿では、対数変換によって明るさ尺度の等歩度性(知覚的均等性)を獲得していることからオストワルトシステムは混色系と顕色系の両側面を兼ね備えたカラーシステムであると考えた。そして、CG生まれのカラーシステムの1つであるHSVカラーモデルを混色系と見なし、オストワルトシステムとの関連性を究明した。混色系の表色値としてRGB値が測色的に定義されているとき、HSVカラーモデルのSパラメータとVパラメータがそれぞれ対数変換前の混色的なオストワルト等色相三角形における純度、鮮明度に対応することを明らかにし、色ベクトル空間に展開されたHSVカラーモデルの等色相三角形は対数変換前の混色的なオストワルト等色相三角形と構造的に一致することを示した。
  • 玉垣 庸一, 宮崎 紀郎, 小原 康裕, 笹山 絵見子
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 3 号 p. 19-28
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    デジタルメディアによる色情報の正確なコミュニケーションに役立てることを目指し、オストワルトカラーシステムの延長線上にその精神を引き継いだ新たなオストワルト型カラーシステム--Hcw表色系--を提案した。心理物理的な色空間から知覚的な色空間への変換として、オストワルトの対数関数に替えてカラーCRTディスプレイの発色特性を考慮したパワー関数を組み込んだ。オストワルトシステムと同様に、変換後の知覚的な空間における色立体としてダブルコーン表現を採用した。心理物理的な空間の三角座標を変換後の知覚的な空間に持ち込んだことによるオストワルトシステムの難点--等白系列と等黒系列ではそれぞれ白色量Wと黒色量Kが一定であるのに対し等純系列では純色量Cが一定とならないこと--は、変換後の等色相三角形自身の三角座標をモデルのパラメータとしたことで解消された。さらに提案モデルの等色相三角形は知覚的均等性の点においてもオストワルトシステムより優れていることを明らかにした。
  • Yoichi TAMAGAKI, Tomohiro OHIRA
    原稿種別: Article
    2007 年 54 巻 3 号 p. 29-38
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    Three types of calorimetric matching schemes (absolute, relative and percent tristimulus matching) were presented along with a discussion of non-tristimulus matching in RGB triplets. Non-tristimulus matching is the traditional manner in which a variety of CRT monitors receive the same source RGB data calculated by 3D computer graphics and use the data as their own RGB input signals without any calorimetric conversion, which is the simplest form of RGB gamut mapping that ensures one-to-one correspondence among source and device gamuts. It is shown that a calorimetric formulation as tristimulus ratios scheme is applicable to this gamut mapping, provided all the monitors are standardized to have the same set of RGB primaries. Each matching scheme was rewritten as a transformation scheme that can be used to calculate absolute tristimulus schemes for colors to be reproduced on imaging devices. Further, it was examined how these transformation schemes are applied to the process of inter-studio and intra-studio color matching.
  • 井上 治郎, 原田 利宣, 今井 敏行
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 3 号 p. 39-46
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    近年,アニメーションや映画などの映像コンテンツに現れる造形物の製作には,コンピュータによってモデリングされたCGを用いることが多い。しかし,それらの造形は作家の感性に委ねられたり,わざわざ実物を計測してなされることが多く,その制作に多大な労力を要する。そこで,本研究では自然造形物や工芸品における曲面が,どのような視覚言語とその組み合わせによって表されるかを明らかにし,それらをデジタルアーカイブ化することを目的とした。まず,曲面における曲率線を抽出するシステムを開発した。次に,そのシステムを用いて,石,ワイングラス,徳利,ならびに,コンピュータマウスにおける曲面の曲率線を抽出し,各曲率線を2つの投影面に投影することにより,2本の平面曲線として取得した。さらに,投影した各平面曲線を曲率単調曲線に分割し,各曲率単調曲線の性質を分析した。これらの分析の結果,各曲面の性質を明らかにし,デジタルアーカイブ化の可能性を示すことができた。
  • Naoshi Kanamaru, Yoshihiro Shimomura, Koichi Iwanaga, Tetsuo Katsuura, ...
    原稿種別: Article
    2007 年 54 巻 3 号 p. 47-54
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    The ultimate aim of this study is to develop a quantitative and objective method for designing toothbrush handles for ease-of-grip by means of ergonomic procedures. It is reasonable to think that easy-to-grip handles would enable more effective removal of dental plaque. To this end, the present study considered a hypothesis that the upper and lower part of the handle would have different roles, and have different optimum diameters depending on the human hand sizes when the handle is palm-gripped. To examine the hypothesis, 24 test toothbrushes were prepared combining a cylindrical upper part of 4 different diameters with a cylindrical lower part of 6 different diameters. Eighteen subjects were divided into 3 groups by their hand sizes. Electromyogram (EMG) of 5 muscles in forearms and hands of the subjects were measured when brushing. The handle diameter which gave minimum muscle load (MML) was calculated by the quadratic regression analyses of the EMG data. The analysis has demonstrated that the diameters with MML for each handle part have been obtained depending on the hand size. In conclusion, our hypothesis was appropriate and this study has shown that ergonomic procedures by EMG measurements are potential tools for designing toothbrushes for ease-of-grip.
  • 平野 聖, 石村 眞一
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 3 号 p. 55-64
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本論では,扇風機のデザインの歴史を研究することを通じ,我が国家庭電化製品のデザイン開発における特徴を解明する一助としたい。明治,大正時代の史料を調査することにより,以下のことが判明した。明治時代には,先進国から我が国へ輸入された製品が,扇風機を普及させる中心的役割を果たした。欧米では,天井扇の需要が大いにあったが,我が国においてはほとんどなく,卓上扇風機を中心に開発が進められた。我が国における職人の能力は高度であった為,欧米から導入された技術を受容できる余地があった。当初は町工場も扇風機を製造していたが,やがて財閥系の大企業が製造を独占するようになる。大正時代に入ると多くの大企業が扇風機製造に進出し,各社の宣伝活動が盛んになった。大正時代前半には,扇風機のデザインにおける基本的な4つの要素が出揃った。すなわち,黒色,4枚羽根,ガード,首振り機能である。扇風機は高価であったので,大半の人々は扇風機の貸付制度を利用していた。その結果,扇風機はステイタスシンボルとして機能した。
  • 李 勇, 釜池 光男, 上田 エジウソン
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 3 号 p. 65-74
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、中国における乗用車の購買行動の分析を通して、デザイン要件の欲求構造を明らかにし、乗用車購買に影響を及ぼす欲求構造とデザイン要件の因果関係を把握することにある。はじめに、既往研究に基づき、乗用車の購買行動に関わるデザイン要件を抽出した。中国の消費者が乗用車購入時に考慮するデザイン要件の優先順位に関するアンケート調査を行い、ISM法によりデザイン要件の欲求構造を明らかにした。欲求構造は5つのグループに分類することができ、各グループの内容を検討すると、マズローの欲求段階説に類似していることが明らかとなった。更に分類の結果に基づき、共分散構造分析により乗用車の購買行動に関わる因果モデルを構築した。乗用車の非所有者と所有者におけるデザイン要件の重視度に関するアンケート調査を基に、因果モデルを検討し、乗用車の購買に影響を及ぼす欲求構造とデザイン要件の困果関係を把握した。本研究の知見は消費者の欲求を的確に把握し、乗用車のデザイン開発の方向性を示すことにつながると思われる。
  • 李 重燁, 金 大雄
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 3 号 p. 75-84
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本論文は現在、日本のBSデジタルデータ放送で送出されている多様なデータ放送サービスの中、天気予報サービスに注目し、各放送局が送るコンテンツ内容の分析とインタフェース上での効率を測定した論文である。さらに本論文ではデータ放送を構成している各社のインタフェースに対し、グラフィック要素ごとに分析を行い、情報検索型データ放送に適したインタフェースへの提案やデータ放送制作時に適用される画面のガイド案を導き出した。実際のテストやGUI分析ではさまざまなインタフェース構成の不備や操作体系のばらつきなどが確認され、今後、コンテンツ制作側の改善が至急求められる。また、今までの天気予報は視聴者にとって身近な情報でありながら限られた情報の活用しかできなかった。つまり天気予報は視聴者にとって受動的な情報であり、一方的な情報であった。テスト終了後は富士通とイードが共同開発したWUS規格を用いてユーザビリティ評価アンケートを行い各放送局の問題点などを定量的に評価した。そしてこれから期待される天気予報コンテンツについても調査を行った。
  • 長井 千春, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 3 号 p. 85-94
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    1930年代前半は、ドイツにおけるデザイン運動の総括期ともいえ、陶磁器業界からもテーブルウェアデザインの名作が数多く誕生した。ドイツ磁器産業は、これまで低価格製品によって世界市場を席巻してきたが、第一次世界大戦以降の不況と輸出不振のなかで、製品の高い「質」をもって国際輸出競争に対峙することを決断していた。本稿では、第一次世界大戦後の経済背景と輸出動向を分析し、ドイツ磁器産業がいかに「製品の質による独自性の確立」を方針とするに至ったかを検証した。また同業界におけるデザイン改革の実践例として、ベルリン窯(KPM)を取り上げ、ドイツ工作連盟やデザイン教育機関との連携に着目し考察を試みた。その結果、原価高騰や急成長した日本の輸出陶磁器産業の猛追により、輸出市場での低価格競争を断念したドイツ磁器産業は、国際的に通用する新たな特徴を輸出製品に必要としたこと、そして、巨大化した工場の生産体制維持のために、製品の「規格化」と「標準化」が必須条件となり、ドイツ工作連盟の「質の思想」が磁器産業界でリアリティーを持って浸透していたことが明らかになった。
  • 楊 紅, 植田 憲, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2007 年 54 巻 3 号 p. 95-104
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    本小論は、費孝通の実証的地域発展研究論である『中国農村の細密化-ある村の記録1936〜82』および『江南農村の工業化-"小城鎮"建設の記録1983〜84』を主たる資料として、「内発的」地域発展の理論と主張を再検討したものである。費孝通は、終生、「志在富民」を学術研究の目標として追求し、実地調査を基礎に据えて、中国における貧困地域の地域振興と発展に有意義な主張と実践を行った。その地域振興理念は、今日、国内外で大規模に行われている「外発的」地域開発に対峙する「内発的」地域振興の様態を示したものとして、重要な意義をもっている。本小論においては、以下の4つを、費孝通の「内発的」地域振興理念を構成する基本理念として抽出・考察した。(1)「志在富民」を目的とする地域振興、(2)「地域の固有性」を基盤とした地域振興、(3)「地域に根ざし、地域に還元する」という地域の伝統文化思想を尊重した地域振興、(4)「地域経済の協調的発展」をめざした地域振興。これらの費孝通の指摘は、地域が自律的・自立的に発展していくための基本的指針として、「内発的」地域発展に多くの示唆を内包している。
  • Shyu-der UENG, Kiyoshi MIYAZAKI
    原稿種別: Article
    2007 年 54 巻 3 号 p. 105-112
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2017/07/11
    ジャーナル フリー
    In the 1980s, the Taiwan traditional arts and crafts industries were deeply impacted by the opening economical policy of China with its cheap labor and a vast market. This paper aims to report and analyze how the concepts of cultural industries and community empowerment, which were introduced to Puli by the authority "Taiwan Provincial Handicraft Research Institute" in the face of industrial restructuring, influenced local development profoundly. The concepts of cultural industries and community empowerment were realized through the collaboration between Puli's local businessmen and arts workers to push ahead with the tasks for revitalization of local industries with the area's cultural and industrial resources. For example, it was to result in a comeback of endangered Pulli Winery, handmade paper shed, lacquer culture museum and Puli's culinary culture. The cultural image and value-aided industries are more distinct.
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