2009 年 56 巻 2 号 p. 33-42
本論は,家具調テレビのデザイン成立過程を明らかにすることを目的として,テレビ受像機「嵯峨」に関し,主として文献史料調査より,以下の内容を明らかにした。1)広告記述で使用された「家具調」の表現が「家具調テレビ」のデザインを誘発する要因のひとつとなった。2)家具調の意味は,使われ始めた当初,和風,日本調と必ずしも一致するものではなかった。3)「嵯峨」は,特徴的なデザインと和風ネーミングの大量広告により,家具調テレビの典型となった。4)「嵯峨」の特徴は,張り出した天板,スピーカーグリル桟,本体と一体感のある脚,天然木の木質感表現である。5)「嵯峨」は,シリーズ展開されており,初代「嵯峨」とは差別化された多様なデザインが展開されている。