デザイン学研究
Online ISSN : 2186-5221
Print ISSN : 0910-8173
ISSN-L : 0910-8173
1940年ニューヨーク万博に出品された写真壁画《日本産業》にみる「報道写真」の影響
山本 佐恵
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 56 巻 2 号 p. 63-72

詳細
抄録

1940年のニューヨーク万博の展示館「カヴァード・スペース」に、日本は写真壁画《日本産業》を展示した。それは「造船」、「手工芸」、「紡績」、「機械工」、「航空」というテーマの5面から構成され、写真のモンタージュに加え、写真への着色や、金属、絣綿布、木綿紐、ガラス、加工ベニヤ板等を写真に組み合わせて構成するなど、造形的処理が施されていた。こうした手法は、欧米の模倣や追従ではない独自の表現方法として、当時、日本の批評家から高く評価された。《日本産業》に使われた写真は、土門拳など当時の新進写真家たちが撮影した「報道写真」だった。5面を連結させて一つのテーマを構成する方法は、「報道写真」における「組写真」の形式にならったものだった。その背景には、当時ドイツから移入された新即物主義と、そこから生まれた「リアル・フォト」の表現があった。また、報道写真家パウル・ヴォルフの写真から、構図や表現に多くの示唆を受けた可能性が指摘できる。

著者関連情報
© 2009 日本デザイン学会
前の記事 次の記事
feedback
Top