デザイン学研究
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人形送り行事が内包する空間観念と空間意匠 : 千葉県成田市下方を事例として
菊池 利彦宮崎 清
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2009 年 56 巻 3 号 p. 51-60

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抄録
村落は、生産から祭祀まで、人びとのおよそあらゆる営みが行われる場所であり、一定の秩序を備えた小宇宙であった。村落の空間秩序の有りようは、そこで展開される人びとのふるまいや伝統行事の様態からうかがうことができる。本稿は、成田市下方における伝統的厄払い行事「人形送り」に注目し、その行事のなかで展開される人びとの所作を読み解き、行事に内包される人びとの空間観念を析出し、当該村落の人びとがなした空間意匠の特質を考察した。それにより、以下の知見を得た。(1)「人形送り」にみられる所作には、藁人形を神格に変貌させ、これを定められた場所に掲げることにより、災厄の村落への侵入を防ぐ意図がうかがわれる。(2)「人形送り」には、下方の4つの集落と集落が管轄する田地全体を「内」とする空間観念が内包されている。(3)「人形送り」は、平穏な生活空間の創出を志向した村落の人びとによる空間意匠そのものであり、時間空間を共有する人びとの間に規範意識や同族意識を醸成するものである。
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© 2009 日本デザイン学会
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