2011 年 58 巻 1 号 p. 59-66
本論は,松下電器におけるデザイン活動のはじまりについて,主として文献史料調査より,以下の内容を明らかにした。1)松下電器のデザイン組織は,1951(昭和26)年に真野善一が招聘されて本社宣伝部に製品意匠課が設立される以前より,ラジオ受信機の製品デザイン開発を担当する組織として意匠係があった。2)松下幸之助は、1951(昭和26)年の米国視察で商品価値を高めるためにデザインが有効であると認識し,帰国後デザイン重視の姿勢を打ち出したが、「これからはデザインの時代」と語った事実は確認できない。3)松下幸之助は,創業時より販売における宣伝の重要性を認識しており,製品デザインも宣伝活動の一部と捉えていた。