2011 年 58 巻 4 号 p. 87-96
工業製品とサービスは組み合わされて,ユーザの目的達成のために利用されている.現在では技術的な可能性が広がっており,統合的にデザインされたサービスと工業製品による魅力的なシステムの開発への期待や要請が高まっている.しかしサービスのデザインと工業製品のデザインは手法が異なり,統合的なデザインの実施はあまり行われていない.そこで本研究では,ユーザが目的達成のためにとる工業製品とサービスの利用プロセスとそこに含まれる各ステップの状況に着目し,プロセスをいくつかのステップに分け,各ステップの状況を項目別に記述するプロセス状況テーブルを提案する.このツールによりステップ間の状況における関係性が把握され,プロセス内の問題点やアイデア創出のための着眼点の発見などが支援されることが期待される.事例を用いた確認実験を行い,このツールによるアイデア創出の効果を確認した結果,アイデアの質が,本実験での評価基準において有意に高まることが確認された.