2013 年 60 巻 2 号 p. 2_77-2_84
現在,医療サービスにおいて利用者のユーザビリティの最適化はいまだ途上にあり,今後の医療サービスを形づくるにあたっては,デザイナーやデザイン研究者などデザイン分野の専門家による取り組みが必要ではないかと考える。
本研究では,医療サービスの中で特に「薬剤の服用」を事例として取り上げ,現在の薬剤服用環境における課題についてユーザビリティの観点から考察するべく,アンケートによる調査を行った。また,調査結果に対して主成分分析による解析を実施し,よりよい薬剤服用環境を考えるにあたって利用者の視点から見た重要点を抽出し,課題解決のための設計指針として活用するよう試みた。
解析の結果,7 つの主成分が明らかになり,これらを設計因子としてデザインモデルを制作した。完成したデザインモデルの有用性について比較調査を行ったところ,従来モデルと比べてデザインモデルの使い勝手や印象が改善したとの結果が出た。このことから,課題解決という目標に対してデザインモデルが一定程度の有用性を備えていることを示すことができた。