デザイン学研究
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行政職員によるデザイン思考の理解と享受
長岡市役所職員向け「デザイン思考体験研修」の事後アンケートをもとにした混合分析法によるデザイン思考の評価
板垣 順平大坪 牧人
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2021 年 68 巻 2 号 p. 2_19-2_28

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抄録

 イノベーションの創出や問題発見・解決を目指す方法の一つとしてデザイン思考が様々な分野で活用されるようになった。とりわけ,大学の教育プログラムや企業活動においてデザイン思考が導入されるとともに,その教育効果や能力向上についての議論も活発になっている。
 一方で,こうしたデザイン思考を導入した取り組みは,大学の教育プログラムや一部の企業活動に止まっている。とりわけ,自治体の行政サービスや施策の企画立案にデザイン思考が導入された事例や既往研究は見られない。その理由として,公共性や全体の奉仕者であることが義務付けられている行政職員にとって,エスノグラフィーのように特定の人びとを対象とした問題発見や課題設定との相性が良くないことや異分野協創の取り組みが困難であることがある。一方で,新潟県中部に位置する長岡市では,2018年からデザイン思考を行政サービスや施策の企画立案に取り入れるために,庁内の職員を対象とした「デザイン思考体験研修」が実施されている。
 本研究では,「デザイン思考体験研修」の事後アンケートの自由記述の結果から混合分析を行い,デザイン思考の有用性を示す要因を抽出する。それらの要因と既存のデザイン思考を導入した教育プログラムの教育効果を比較し,デザイン思考が行政サービスや行政施策の一助となり得ることを明らかにする。

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© 2021 日本デザイン学会
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