デザイン学研究
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製品の使用過程における“余白”を考慮したデザインワークの実施
─「不便益」を生み出すための新たなアプローチの要件整理
影山 友章
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2022 年 68 巻 4 号 p. 4_1-4_6

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抄録

 “手間や労力がかからない製品やサービスの方が優れている”とされる,従来の価値観とは異なる,「不便益」という考え方が近年注目されている。一方,不便益を備えた物事を生み出すための方法論は,まだ未完成であると言える。本研究の目的は,「不便益を備えた製品やサービスを生み出すための方法論」を構築することである。そして,その目的を達成するために,新たなデザイン指標の仮説として「製品の使用過程における“余白”」を提案する。これは,製品やサービスを使用する際に,ユーザーの行動や意思がどれだけ介在できるのかを示したデザイン指標である。本研究では,その指標を実際のデザインプロセスの中で活用できるようにするために,概念の整理,細分化を行なった。そして,プロダクトデザインを専攻する大学生のデザイン実践に,整理された余白の概念を取り入れることで,そのアプローチの有効性の確認を試みた。結果,不便益を備えたいくつかのデザインアイデアを生み出すことができ,理論構築の足掛かりを築くことができた。

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© 2022 日本デザイン学会
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