デザイン学研究
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中国・内モンゴルにおける伝統的な二弦擦弦楽器の類型とその特徴
烏蘭 吉亜青木 宏展植田 憲
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2024 年 71 巻 1 号 p. 1_1-1_10

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抄録

 本稿では,現地調査を通じて収集した二弦擦弦楽器をサンプルとして,多変量解析によりその類型を材料の観点から明確化するとともに,それぞれの類型ごとの特徴を考察することを目的とした。その結果,82点のサンプルは「身近な自然材料を活かした固有型」「合成材料で補完した踏襲型」「人工材料を汎用した複製型」「機械で加工した量産型」の4つに分類された。また,内モンゴルの社会環境とモンゴルの人びとの生活習慣の変化に対応した,それぞれの年代区分における二弦擦弦楽器の特徴は次のようになる。(1)明代から1960年代までは,地域特有の自然材料を獲得しものづくりが行われてきた。(2)1960年代から1980年代までは,人工材料が一部の自然材料に代わって使われ始め,さらに舞台の演奏性を向上させるためにさまざまな試みがなされた。(3)1980年代から21世紀初頭にかけては,人工材料や輸入材が広く普及し,伝統楽器として認知されるにつれ,二弦擦弦楽器の形や使用材料が標準化された。(4)21世紀初頭以降,非物質文化遺産保護運動の高まりに伴い,二弦擦弦楽器の伝統性を強調するために,動物の皮や雄馬の尾毛など使用材料の規範の明確化が重視されるようになった。

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