抄録
90年代に入り、テクノロジーの進歩は、グラフ電卓を生み出し、特に米国では、その教育への普及が目覚ましいものがあった。それに加え、米国の数学教育界では、近年、コンピュータネットワークの教育への利用、数式処理システムの教育への利用が盛んである。米国では、数学教育に、図形ツール,グラフ電卓等によるテクノロジー導入が進み、その成果を果たした。その成果の延長線上の新たな挑戦という見方をすれば当然の目標と思われる。大学での初等数学はもちろんのこと、進んだ高校では、テクノロジー機器/コンピュータネットワーク/数式処理システムの活用により新たな数学教育変革の端緒についていることが数多く報告されている。 それに対し、日本におけるテクノロジーを用いた数学教育は、CAI,CMIの利用から始まり、Hypertext教材の利用等の変遷を経ている。これらの教材開発の問題は、どうしても選択肢形式の教材開発になってしまうことである。特に、数学教育は、考えること(数学的な考え方)を指導することが重要であり、選択肢形式になりがちな教材開発には、その限界があった。また、日本においては、コンピュータネットワーク,数式処理システムはエキスパートの使用として、研究活動に普及した。少数の教育利用者への研究はあったが、それが普及するまでには至らなかった。ここ数年、日本においても、図形ツール,グラフ電卓の利用が盛んになった。この教育におけるテクノロジーの普及に関するズレはいつまで続くのか?それとも、一気に欧米に並ぶのか?もし、欧米流にテクノロジーの利用をするならば、ハードのばらまきだけでことが足りるのか?グラフ電卓は、個人の道具として使え、数学の通常の授業で使える。この点は大きな利点である。しかし、パソコンソフトとして、この路線は発展できないのか。これからの問題は、グラフ電卓普及の次の問題として迫っている。 さらに、近年、多くの国際会議では、インターネット上に大規模な教育用ネットワークの構築に関する研究発表が多く見られる。また、日本の数式処理システムを利用した研究では、システム開発とアルゴリズム理論の研究が主であったが、自動推論理システムの教育への応用研究も発展が著しい。 本ワークショップでは、上記のような多用な数学教育におけるテクノロジーを、以下のように、グラフ電卓部門,数式処理システム部門,インターネットとSCS部門に分けて討論を行う。