抄録
著者らはこれまで, RFID技術を用いたセンシングボードを用い, 物理世界と仮想世界とを融合することによるface-to-faceでのグループ学習支援システムを構築してきた.このシステムを用いた実践から, コンピュータの使用が苦手な学習者でも容易に学習に参加できる, 教科書等を通して得た知識を物理世界で試せる, などの点で有効であることを示せた.しかし, 学習者がシステムのゲーム的な側面にのみ関心を示し, 学習という活動に結びつかない場合も観察された.そこで, 本研究では, より本物性の高い学習支援環境の構築を進め, その評価を行った.本稿で提案するシステムでは, 学習者のグループが互いにface-to-faceで話し合えないよう, 複数のセンシングボードを別の場所に配置した.そして, 各ボード上での操作が互いに影響を及ぼし合うよう, それらをネットワークで繋いだ.グループ内の学習者はボードを囲みながらface-to-faceで問題を解決するとともに, 別のグループの学習者とは, チャットシステムを介して交渉を行う.本システムを用いた環境問題のグループ学習を行うに当たっては, 学習の文脈を明確にするための授業カリキュラムを新たに構成し, 本システムの有効性を検証した.