学校教育が果たす社会的な人材選別機能は受験競争として表面化し,学校教育をその基本理念から大きく逸脱させるほどの影響を学校教育全体に及ぼしてきている。学校での理科学習が詰め込みとドリルを中心に行なわれる顕著な傾向性を示すのも,その影響の一つの表われであろう。受験競争によるそのような歪曲のゆえに,学校教育は厳しい批判にさらされることになる。しかし,学校理科に関するこれまでの研究は,たとえその歪曲を的確にとらえることはできても,学校教育に課せられた人材選別機能を明確な形で視野に入れた実効ある教育実践改善策を打ち出すことができなかった。このことへの反省を踏まえて,これからの理科教育の研究においては,学校教育の人材選抜機能はもとより,学校教育が果たすもろもろの社会的機能を視野に入れての,幅広い視点からの研究アプローチが必要であろう。
