抄録
筆者は「郷土」という授業の自然分野を担当している。その中で、善光寺地震を例とし、過去の自然災害を知ることを通して地域の自然の理解を図る試みを行った。ここではその授業の構成を述べる。(1)地図上で長野盆地の輪郭を描き、東縁と断層の発達した西縁を比較する。(2)(1)と写真などから長野盆地西縁が断層により形成されたこと、善光寺地震もその現れであることを知る。(3)善光寺本堂に残された地震の痕跡の見学(4)善光寺地震の際の各集落の全潰率(戸数÷全潰戸数)を算出し、地形図上に激震地(全潰率30%以上)をプロットする。そこから激震地が断層に調和的に配列していることを見出す。(5)善光寺地震の際の松代町の被害分布から扇状地上で被害が少なく、沖積低地上で被害が多いことを見出す。(6)善光寺地震の際の大規模な山崩れで犀川がせき止められ、その後決壊して大洪水を引き起こした。資料により、そのときの洪水被害と行政(藩)の対応、洪水流路を知る。