抄録
高等学校に「地学」 という科目が設定されて以来、その履修状況は教育課程や大学入試制度の改訂のたびに非常に大きな影響を受けながら今日に至っている。最近では関係者の努力にもかかわらず容易に好転の兆しが見えない。ここでは、はじめに高等学校教育課程の変遷と地学履修者数の変化を歴史的に概観する。次に、昭和57年に文部省がかなりカを入れて新設した必修の「理科I」は地学履修者を増やすことにプラス要因として働いてくれるのではないかというささやかな期待があったが、現実にはその期待が大きくはずれたことを述べる。また、地学履修者の増加を訴えるなかで「地学の存在意義は何か?」という根本的な疑問が提出されたことは、地学担当者としての日頃の活動が不足していたことを痛感し、あらためて私見をのべた。最後に、履修者を増やす手だてについて当面行動に移すべきことをアンケートをもとにしてまとめ、地学履修についての協力を各界に訴える。