2015 年 30 巻 5 号 p. 45-50
今日,理科教育では平成 27 年度全国学力学習・状況調査の結果を受けて,「科学的な思考・表現」能力の育成が叫ばれている。本研究では,その育成に必要な能力として挙げられている問題解決能力の「推論(resoning)」に着眼した。理科学習を通じた推論と捉えられる「科学的推論」を育成するには,その成立過程及び教授学習モデルが明らかとなっていることが要請される。しかし,科学的推論を成立させるための要素や手立て等,詳細な研究が十分なされているとは言い難い。そこで,本研究では,科学的推論の育成を促す授業デザインの提案を目的とした。その際,タイトラーらが体系化した科学的推論と表象の関連を示したモデルと和田らが提案している表象ネットワークモデルを援用し,表象の視点に立脚することで学習モデルを模式化した。また,タイトラーらが明らかにした大別された2つの推論過程に位置付く推論活動を基に教授モデルを模式化した。これらのモデルを基に,実証的に理科授業を分析することで「科学的推論」の成立過程の内実を具体的に明らかにした。