2016 年 31 巻 5 号 p. 9-12
中学校理科第2分野の「消化」の単元で実施される実験としては,唾液によるデンプンの分解が一般的である.しかし,物質の化学的な変化は生徒によっては理解が難しい.そこでより視覚的・感覚的に理解しやすい物理的な変化としてとらえさせる教材として,草食動物の糞の利用を検討した.草食動物は消化の方法により単胃動物と反芻動物に分けられ,胃を複数持つ反芻動物の糞は,成体の大きさに関係なく小さく,表面からは未消化の植物片が見られなかった.糞を切断すると植物片を確認できたが,単胃動物と比較して断片は小さく,密に詰まっていることが確かめられた.胃の数という視点で単胃動物の糞と反芻動物の糞を比較することで,内容的には発展的であるが,段階的な消化の過程を理解しやすくなると考えられる.