分子モデルや模型を組み立てたりソフトウェアで描いたりした分子構造は,存在しない物質でもその構造を描けるため,実在を伴わない仮想的・擬似的なものである.実際の物質の構造を知るには,原子や分子が規則的に配列している結晶が最適であり,X線結晶構造解析により分子構造そのものが得られる.身の回りの物質や教科書に掲載されている物質を対象として,模型やモデルではない本物の物質の姿を,小・中・高の教員や児童生徒が教育現場で閲覧できる分子構造ICT教材を目指し,X線結晶構造解析のデータ収集を行った.結晶性固体はそのままでX線結晶構造解析を行い,分子構造データを得た.液体の物質ではこの手法が使えないため,「結晶スポンジ」と呼ばれる細孔性錯体結晶に液体化合物を取り込み,X線結晶構造解析により分子構造データを得た.これらのデータより,教員や児童生徒が教育現場で利用できる分子構造ICT教材を開発し,webサイトで公開した.