2020 年 34 巻 8 号 p. 29-34
本研究プロジェクトの目的は,授業研究(Lesson Study)を比較・分析するための理論的枠組みを作成することである。このため,本稿においては,授業研究に含まれる授業設計プロセスに着目し,4都市における教員養成系大学の学生が行った授業設計プロセスを比較した。その目的は,授業設計のプロセスがどの様な条件と制約を受け,どの様な形態を採っているかを明らかにすることである。プラクセオロジーとその決定レベルを理論的枠組みとして分析を行った結果,次の3つの可能性が確かめられた。まず,数学的なプラクセオロジーの設計においては,領域以下のレベルでの条件と制約に違いがあることが示唆された。次に,参加者による教授行為の組織に影響を与える条件と制約の決定レベルは,参加者同士で合意が形成されていないレベルよりも下であることが示唆された。最後に,用いる指導案のフォーマットによって,授業設計のプロセスに大きな差が認められる可能性が示された。