本研究では,物理基礎を履修する高校1年生の運動の法則の理解度を調査した。調査の目的は,物理法則の計算問題などができれば,その問題で問われる物理的な内容も理解できているかどうかを調べることであった。そのため本研究では具体的に,計算問題,変数どうしの大小関係,そして物理法則が示す因果関係の理解度を調べた。その結果,ほぼ全員が法則に数値を代入して答えを算出できるが,約半数の生徒しか質量と加速度の関係(力が一定のとき,質量が大きくなると加速度は小さくなる)を理解できていないことが分かった。さらに因果操作ができる生徒は少なく,約9割の生徒が「一定の力がはたらく」とき「一定の速度で運動するようになる」と考えていることが分かった。これらの結果から,力学初学者は,計算問題が解けるようになっても,物理的な理解に課題があることが分かった。