2023 年 37 巻 5 号 p. 107-110
里山における生物多様性や環境保全の学習支援を目指して,武田ほか(印刷中)は「里山管理ゲーム」を開発してきた.本ゲームではプレイヤーが里山の管理人となり,約150年間の里山管理を体験できる.この体験を通して,里山の生物多様性や環境保全に関する知識獲得が期待されている.しかし,これまで小学校の授業実践における本ゲームの活用とその学習支援上の有効性の検討はされていない.本研究では里山管理ゲームを用いた小学校理科の授業を行い,ゲームプレイ中の相互行為分析を通したシカ駆除の知識獲得過程の事例的検討を行った.その結果,シカ駆除の必要性に関する知識を獲得できていたペアでは,長期的に見てシカを駆除すべきであるということへの気付きが達成されていたことがわかった.一方,シカ駆除の必要性に関する知識を獲得できていなかった児童を含むペアでは,長期的に見てシカを駆除すべきであるということへの気付きが達成されていなかったことが明らかとなった.