本研究は,小学校教員養成の理科の授業科目において,災害を引き起こす川を題材とした民話に描かれた先人の自然観は,川の災害に対する学生の指導観の変容にどのように寄与するかを明らかにすることを目的とした.具体的には,民話「姉川と妹川」を用いて,川と人間とのつながりに対する先人の捉え方を提示した上で,グループインタビューを実施し,回答をSCATにより分析した.その結果,当初は,川の災害に関する理科の学習において,水害発生の原理を科学的に理解し,川(水害)の危険性を認識するような指導を重視していた学生が,川の恩恵や共生の視点に基づいた指導の重要性に気付くなど,自然観および指導観に変容が見られた.以上より,民話に描かれた先人の自然観は,学生が自分自身の自然観や指導観を省察し再構築する契機となり得ることから,理科の教員養成における有効な教材となる可能性が示唆された.