2007 年 64 巻 p. 37-41
長野市南部に分布する更新世後期の湖成層である高野層において, 全層ボーリングを行い53.88mの連続したコア試料を得た. コア試料は, 黒灰色でほぼ均質な粘土質シルト~シルトの層相を示し, 多数のテフラ層を挟んでいる. これらのうち5つの広域指標テフラ (DKP, Aso-4, K-Tz, Ata, Aso-2) の放射年代値と補正深度を用いて年代モデルを作成した. 高野層のTOC含有率の経年変動は, 本コア試料中の花粉組成変化と同調しており, およそ169ka~37kaにおける数万年周期の長期の気候変動を示している. この変動はMIS6~3前半における海洋酸素同位体比変動と同調しており, 各ステージに対比される長期の温暖期・寒冷期が認識できた. また, 数百~数千年周期の短期の寒暖変動も存在しており, これらは亜氷期-亜間氷期サイクルに相当すると考えられる. また, それらの温暖期の多くはIS9~25に対比される可能性がある.