抄録
東アジア地域の淡水湖,汽水湖,海底等から採取した堆積物中の鉛-210,セシウム-137の測定結果から,放射能強度,フラックス,インベントリーについて,堆積環境に関する特徴を抽出するために検討を行った.表層濃度は場所によってかなりの変動を示した.鉛-210の平均フラックスは,淡水湖<汽水湖<海底の順に増加する傾向を示し,一方,セシウム-137はその逆であった.鉛-210とセシウム-137のインベントリーは,同じ湖もしくは隣接する地域で良い相関を示した.そのインベントリーの比(137Cs/ 210Pbex)は海底堆積物<汽水湖<淡水湖の順であり,中国の湖における比は高めであった.このように,インベントリーの比は堆積環境,地質学的なイベント,放射化学的な出来事を示唆する指標になりうることが明らかとなった.