堆積学研究
Online ISSN : 1882-9457
Print ISSN : 1342-310X
ISSN-L : 1342-310X
研究報告
水槽実験による津波起源混濁流の発生場所とそのメカニズムの解明
山本 大貴増田 富士雄成瀬 元
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 75 巻 2 号 p. 65-72

詳細
抄録

本研究では,水槽実験によって津波起源混濁流の発生場所とそのメカニズムについて考えた.水槽内に海浜と外浜,そして傾斜変換部の存在する陸棚を含む海底地形のモデルを再現し,そこに津波を作用させた.その結果,津波起源混濁流が2つの領域で発生することが分かった.外浜上部と陸棚上に存在する傾斜変換部である.外浜上部では,寄せ波と引き波の衝突によって生じる跳水現象が混濁流を発生させた.その跳水現象は海底地形の大規模な侵食を起こして外浜上で浮遊堆積物雲を形成し,斜面を流れ下る混濁流が発生した.一方,陸棚上の傾斜変換部では,寄せ波接近時の水位上昇に伴う剥離渦の発生と傾斜変換部付近での流れの加速による底面の堆積物の連行が発生し,浮遊堆積物雲が形成された.そして,引き波時にさらに規模を増し引き波による初速と重力が駆動力となり混濁流が発生した.また,これら2つの混濁流はサイズと速度に違いがみられ,外浜上部で発生した混濁流は陸棚上の傾斜変換部で発生した混濁流よりもサイズ,速度ともに大きかった.これらの実験結果は,津波起源混濁流とその堆積物の研究により深い解釈を与えるに違いない.

著者関連情報
© 2017 日本堆積学会
前の記事 次の記事
feedback
Top