堆積学研究
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論説
福島県南相馬市小高区のエスチュアリーにおける2011年東北沖地震による津波堆積物の形成過程
太田 勝一石澤 尭士保柳 康一
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2017 年 76 巻 1 号 p. 3-16

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抄録

南相馬市小高区の井田川低地は小規模なエスチュアリーで,2011年東北地方太平洋沖地震津波が3.2 km内陸まで遡上した.本論では遡上経路の地形と堆積物の層相にもとづき,津波堆積物の形成過程を復元した.津波堆積物は下位よりユニット1〜3に区分され,ユニット1はサブユニット1A〜1Cに細分される.サブユニット1Aは細粒砂からなり,津波の初期に排水路から侵入した津波による堆積物である.サブユニット1Bは雑多な礫が多量に混じる,浜堤と河川堤防を越流した遡上流による堆積物である.サブユニット1Cは中〜細粒砂からなる,内陸まで到達した遡上流の堆積物である.これらのサブユニットの大部分は,波高が特に大きかった津波第1波の遡上流により形成された.ただし,サブユニット内には津波第2波以降の小規模な遡上流により形成された明瞭な侵食面が部分的に認められる.ユニット2は淘汰不良な泥質細粒砂からなり,津波波高が低下した津波後半での戻り流れによる堆積物である.ユニット3は塊状の泥からなり,津波後の冠水期間に沈積した堆積物である.

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© 2018 日本堆積学会
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