堆積学研究
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カバーストーリー
論説
  • 太田 勝一, 石澤 尭士, 保柳 康一
    2017 年 76 巻 1 号 p. 3-16
    発行日: 2017/12/26
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル フリー

    南相馬市小高区の井田川低地は小規模なエスチュアリーで,2011年東北地方太平洋沖地震津波が3.2 km内陸まで遡上した.本論では遡上経路の地形と堆積物の層相にもとづき,津波堆積物の形成過程を復元した.津波堆積物は下位よりユニット1〜3に区分され,ユニット1はサブユニット1A〜1Cに細分される.サブユニット1Aは細粒砂からなり,津波の初期に排水路から侵入した津波による堆積物である.サブユニット1Bは雑多な礫が多量に混じる,浜堤と河川堤防を越流した遡上流による堆積物である.サブユニット1Cは中〜細粒砂からなる,内陸まで到達した遡上流の堆積物である.これらのサブユニットの大部分は,波高が特に大きかった津波第1波の遡上流により形成された.ただし,サブユニット内には津波第2波以降の小規模な遡上流により形成された明瞭な侵食面が部分的に認められる.ユニット2は淘汰不良な泥質細粒砂からなり,津波波高が低下した津波後半での戻り流れによる堆積物である.ユニット3は塊状の泥からなり,津波後の冠水期間に沈積した堆積物である.

研究報告
  • 大串 健一, 内田 昌男, 柴田 康行
    2017 年 76 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2017/12/26
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル フリー

    深海堆積物の同一層準における浮遊性有孔虫と底生有孔虫の放射性炭素年代差は最終氷期から完新世にかけての海洋循環速度を示す深層水の年齢を推定するための有効な古環境指標となる.しかし,炭酸塩の保存性が悪い太平洋の深海底では,深層水の年齢復元に適する海底堆積物コアを得ることは非常に難しい.北太平洋の中央部に位置するシャツキーライズは,有孔虫殻からなる炭酸塩物質を多く含む深海堆積物が堆積する数少ない場所である.本研究ではシャツキーライズから得られた2本の海底コア試料(コアNGC102とコアNGC108)の底生·浮遊性有孔虫の放射性炭素年代差を分析した.本コアは生物攪拌を受けた石灰質軟泥である.堆積速度は,コアNGC102(水深2612m)で1.4-5.3cm/kyrであり,コアNGC108(水深3390m)で2.3-6.6cm/kyrであった.底生·浮遊性年代差は,コアNGC102で7010年〜180年,コアNGC108で2730年〜580年を示した.コアNGC102において,海底面下の堆積物混合層で得られた大きな底生·浮遊性年代差(平均で6440年)は報告されている現代の北太平洋深海水の年齢よりもおよそ4700年大きい.この底生·浮遊性年代差が実際の深層水の年齢から大きくずれたのは,堆積速度が遅いため生物による堆積物の鉛直混合(生物攪拌)の影響を受けて,古い層準の底生有孔虫個体が上方移動したことが底生·浮遊性年代差に反映された結果と考察した.一方,深さ14-16cmでは年代差2470年とおおよそ現代の深層水の年齢に近くなるが,22-28cmでは180〜220年と小さすぎる年代差である.コアNGC108は,コアNGC102より堆積速度が速く,底生有孔虫,浮遊性有孔虫の産出個体数変動パターンが類似しており,底生·浮遊性年代差への生物攪拌の影響が比較的小さいと考えられる.15700年前の底生·浮遊性年代差の値(990±200年)は,現代の深層水の年齢より760年小さい.この小さい年代差は,ハインリッヒ寒冷イベント1の間に北太平洋で深層水が形成され,その影響下にコアNGC108地点があった可能性を示す.しかし生物攪拌や大気放射性炭素濃度の減少による見かけ上の効果を反映するかの検討が今後の課題である.

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