2018 年 76 巻 2 号 p. 61-75
日本海東縁に発達する表層型ガスハイドレートの腑存域では,しばしば海底から海水中にガスバブルを放出するガスプルームが確認される.ガスプルームを形成するほどガスに富んだ流体が堆積物中を上方へ移動することで海底地盤を乱し,地盤強度が低下することが表層型ガスハイドレートを開発する際の障害の1つになると指摘されている.本研究では2つの海域(上越沖,最上トラフ)で海底下数mの柱状堆積物を採取し,物理·力学試験および地化学分析を行った.両海域を比較すると,物理試験でほとんど違いがみられなかったが,ガスプルームがある海域で堆積物強度が小さく,溶存CH4 濃度も高かった.ガスプルームが観測されなかった海域では堆積速度が大きいと,堆積物強度が小さくなる傾向を示した.どちらの海域においても,溶存CH4 濃度と堆積物強度に関係はみられなかった.これらの結果はガスプルームがある海域では原位置において,堆積物強度が小さいことを示唆する.