北陸地方北部における古津波履歴を明らかにすることを目的として,富山県氷見市島尾地区の浜堤背後の低地で津波堆積物調査を行った.ハンドコアラーを用いて採取したコアの堆積相解析の結果,この低地の地層は浜堤の堆積物と,浜堤背後の凹地を埋積した湿地や池,沼の堆積物からなることが分かった.この凹地の堆積物から,イベント堆積物が計6層抽出され,そのうち2層はほぼ同層準に分布すること,側方で植物片の濃集が観察されることから同一のイベントで堆積したものと考えられる.このイベント堆積物は,その含有鉱物や堆積構造,及び分布範囲の広さから,津波に由来する可能性がある.一方で,河川の氾濫による堆積物の可能性も残されており,成因を特定するためには,継続して調査を続ける必要がある.なお,このイベント堆積物の直下の 14C年代は2,344-2,155 cal BPである.