堆積学研究
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79 巻, 1 号
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カバーストーリー
論説
  • 小松原 純子, 中山 俊雄, 中澤 努
    2020 年 79 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2020/11/13
    公開日: 2021/10/26
    ジャーナル フリー

    東京低地の地下には最終氷期に形成された関東地方最大の埋没谷がある.この埋没谷を埋める沖積層の層序·形成プロセスを明らかにするため,関東平野の陸上から掘削可能でもっとも埋没谷が深い江東区若洲で85 mの沖積層ボーリング調査GS-KWS-1を行った.

    GS-KWS-1コアは下位から更新統,沖積層,埋立土からなる.沖積層は下位から5つのユニットに分けられ,それぞれ礫質河川,砂質河川(1万5千年前〜1万1千年前),エスチュアリーもしくは海進期ラグ,プロデルタ(4千年前〜1千年前),デルタフロント(1千年前以降)の堆積物からなる.

    1万年前〜4千年前頃の堆積物はGS-KWS-1地点では欠けており,堆積時間間隙が認められる.プロデルタ〜デルタフロント堆積物の年代は海側に向かって新しくなっており,デルタフロントは2.7 km/千年の速度で前進していたことがわかった.

研究報告
  • 渡部 真史, 吉井 匠, Volker Roeber, 後藤 和久, 今村 文彦
    2020 年 79 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2020/11/13
    公開日: 2021/10/26
    ジャーナル フリー

    巨礫移動モデルを活用すれば,沿岸巨礫を運搬した先史時代の古津波/波浪の規模推定を実施できる可能性がある.巨礫移動モデルの開発や精度検証に活用されてきた従来の巨礫移動実験データは最大でも数十メートル程度の小規模な水槽を用いて,計測されてきた.しかし,巨礫移動モデルの精度検証には,スケーリングによる歪みが小さい大型実験装置を活用した実験データが非常に有効である.

    本研究では,全長205mの超大型水路を用いた津波による巨礫移動実験を行いて,実環境に近い条件下で巨礫の移動距離,移動速度,運搬過程を計測した.本実験では0.35-0.53kgの直方体ブロックが最長45 m運搬され,運搬プロセスが滑動から転動に転移する直方体ブロックの移動速度を計測できた.本実験の縮尺は小さく,巨礫移動計算の精度検証に適した実験データであるため,沿岸巨礫研究に役立つことが期待される.

  • 立石 良, 河村 綾太
    2020 年 79 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2020/11/13
    公開日: 2021/10/26
    ジャーナル フリー

    北陸地方北部における古津波履歴を明らかにすることを目的として,富山県氷見市島尾地区の浜堤背後の低地で津波堆積物調査を行った.ハンドコアラーを用いて採取したコアの堆積相解析の結果,この低地の地層は浜堤の堆積物と,浜堤背後の凹地を埋積した湿地や池,沼の堆積物からなることが分かった.この凹地の堆積物から,イベント堆積物が計6層抽出され,そのうち2層はほぼ同層準に分布すること,側方で植物片の濃集が観察されることから同一のイベントで堆積したものと考えられる.このイベント堆積物は,その含有鉱物や堆積構造,及び分布範囲の広さから,津波に由来する可能性がある.一方で,河川の氾濫による堆積物の可能性も残されており,成因を特定するためには,継続して調査を続ける必要がある.なお,このイベント堆積物の直下の 14C年代は2,344-2,155 cal BPである.

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