堆積学研究
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研究報告
2011年東北地方太平洋沖地震津波による岩手県大船渡湾の海底堆積物変化,およびその後の経年変化
横山 由香林 元気八束 翔坂本 泉
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2023 年 81 巻 1-2 号 p. 27-41

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抄録

岩手県大船渡湾で採取した海底堆積物から,2011年東北地方太平洋沖地震津波による海底堆積物の変化,および地震後数年間における堆積物変化を明らかにすることにより,自然がもたらす海底環境変化および復興工事など人間活動に伴う堆積物・堆積環境の変化の検討を行った.これらの変化を把握することは,沿岸域における自然環境と共存する防災・減災へ向けたインフラ整備に対し,重要な情報となると考えられる.本研究の結果から,海底堆積物の分布は,大局的には地震津波前後で大きな変化は認められなかった.しかし,①湾央部珊瑚島南部では津波後に礫質堆積物の割合が高くなり,②湾口防波堤沖では,津波後に砂質堆積物から泥質堆積物に分布が変化したものの,2016年10月(地震発生から約5年後)には再び砂質堆積物が卓越する分布に変化した.湾口防波堤沖における2016年10月以降の堆積物は,地震津波前の分布傾向に類似する.これらの堆積物変化は,湾口防波堤の津波による倒壊,その後の再建による影響の可能性が推察された.湾口防波堤再建後には,海底観察映像からウェーブリップルが確認され,防波堤により海底に与える波浪の影響が変化したことが推察された.したがって,湾口防波堤沖の堆積物変化は,津波による湾口防波堤の倒壊,その後の再建に伴い,湾口防波堤沖の堆積環境が変化したことによると考えられた.また,現在の大船渡湾は地震津波以前と似た堆積環境にある可能性が推察された.

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© 2023 日本堆積学会
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