堆積学研究
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カバーストーリー
論説
  • 竹田 大輔, 藤野 滋弘, 澤井 祐紀, 松本 弾, 高田 圭太
    2023 年 81 巻 1-2 号 p. 3-17
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/06/17
    ジャーナル フリー

    津波堆積物を河川の氾濫など他のイベントで形成された層と区別するためには堆積物から遡上流・戻り流れを識別することが重要である.過去の津波の古流向を復元するため,Takada et al.(2016)が報告した礫質津波堆積物のX線CT画像を対象にして統計的仮説検定を用いた粒子インブリケーション解析を行なった.解析はTakada et al.(2016)のTSd1に相当する層(S1)に対して行い,2地点で採取した3本のコアを使用した.解析の結果をローズダイアグラムで示し,さらに得られた長軸方向角度データが従う分布型や,長軸方向角度データが統計学的に有意な集中を持つかを調べるために統計学的仮説検定を行った.その結果,S1層には遡上流と戻り流れのユニットが存在することが示された.S1層の中において遡上流のユニットは戻り流れのユニットよりも厚く,より頻繁に観察された.

研究報告
  • 増田 富士雄, 糸本 夏実
    2023 年 81 巻 1-2 号 p. 19-26
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/06/17
    ジャーナル フリー

    ゾウやシカなどの足跡化石の産地として有名な滋賀県野洲川河畔の約260万年前の古琵琶湖層群の露頭について,堆積相解析を用いて再調査した.その結果,この地層が小型の湖沼デルタの前進によってできたものであることを確認し,その堆積物の特徴を明らかにした.デルタの頂置層は分岐流路砂層,氾濫原泥層,河口州砂泥層からなり,足跡化石や立ち木化石を含む水平層である.前置層は砂泥互層で,下位の地層にダウンラップして前進した緩傾斜の構造を示す.底置層は塊状の粘土層からなる.それらの堆積物からは,通常の気象現象に伴うものと,テクトニックによると考えられる2種類の水位変動の存在を確認した.さらに,堆積構造から求めた古流向やデルタの前進方向は東から西で,従来の報告とは異なった結果が得られ,調査地の東側に存在した大きな湖沼に流れ込んでいたとする古地理に再検討が必要となった.

  • 横山 由香, 林 元気, 八束 翔, 坂本 泉
    2023 年 81 巻 1-2 号 p. 27-41
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/06/17
    ジャーナル フリー

    岩手県大船渡湾で採取した海底堆積物から,2011年東北地方太平洋沖地震津波による海底堆積物の変化,および地震後数年間における堆積物変化を明らかにすることにより,自然がもたらす海底環境変化および復興工事など人間活動に伴う堆積物・堆積環境の変化の検討を行った.これらの変化を把握することは,沿岸域における自然環境と共存する防災・減災へ向けたインフラ整備に対し,重要な情報となると考えられる.本研究の結果から,海底堆積物の分布は,大局的には地震津波前後で大きな変化は認められなかった.しかし,①湾央部珊瑚島南部では津波後に礫質堆積物の割合が高くなり,②湾口防波堤沖では,津波後に砂質堆積物から泥質堆積物に分布が変化したものの,2016年10月(地震発生から約5年後)には再び砂質堆積物が卓越する分布に変化した.湾口防波堤沖における2016年10月以降の堆積物は,地震津波前の分布傾向に類似する.これらの堆積物変化は,湾口防波堤の津波による倒壊,その後の再建による影響の可能性が推察された.湾口防波堤再建後には,海底観察映像からウェーブリップルが確認され,防波堤により海底に与える波浪の影響が変化したことが推察された.したがって,湾口防波堤沖の堆積物変化は,津波による湾口防波堤の倒壊,その後の再建に伴い,湾口防波堤沖の堆積環境が変化したことによると考えられた.また,現在の大船渡湾は地震津波以前と似た堆積環境にある可能性が推察された.

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