1994 年 40 巻 40 号 p. 33-46
伊江島と伊是名島における二畳紀からジュラ紀にかけての層状赤色チャートについて4つのシークエンスを選びこれらのシークエンスが遠洋性の深海底で形成されたものであるかどうかを検討した. その結果, 伊江島タッチューの, 70m以上厚いシークエンスとして露出する, 三畳紀からジュラ紀の層状赤色チャートは本当の遠洋性の堆積相を示すことが解った. 他の3つのシークエンスは, 灰緑色の層状チャートが混じったりして, 本当の遠洋性の相を示さない. これらの4つのシークエンスから64個の岩石試料を採集して全岩及び炭酸塩部における化学分析を行った. タッチューの赤色チャートのシークエンスにおいては, 下方に行く程, Alをはじめ主要及び微量成分の金属元素濃度が高くなる傾向が見られ, 三畳紀からジュラ紀にかけて, プレートが南半球から赤道を通過することにより, 堆積したシークエンスであることを示す. 非石灰質部におけるFeとMg間の相関度や, 他の主要元素間における相関度から, 伊江島タッチューのシークエンスは遠洋性の深海底で堆積したものであることが解るが, 他の3つのシークエンスについては半遠洋性の深海底のものと判別された.