本研究は、音声言語を母語(第一言語)とし、日本手話を第二言語として学習する成人聴者(M2L2学習者)を対象に、音韻習得過程における表出エラーのパターンおよび要因を解明し、今後の手話指導の一助となることを目的としている。手話言語の音韻パラメータは主に手型・動き・位置であり、その調音器官は手・腕・顔・頭・上半身となるが、M2L2学習者はそれらをどのように知覚し表出するのであろうか。調査の結果、それぞれの音韻パラメータにおいて先行研究と一致するエラー(表出パターン)が観察され、手話の調音器官を正確に知覚し、またコントロールすることの困難さがエラーを起こす要因となることが分かった。また、音声言語とモダリティは異なるものの、音声日本語の音節構造や日常生活時に用いるジェスチャーが、手話表出時に影響を及ぼしていると考えられる表出も見られ、モダリティを超えた母語からの転移も起こり得ることが示唆された。