手話・音声言語研究 関西学院大学手話言語研究センター紀要
Online ISSN : 2759-355X
創刊記念論文
日本の大学におけるL2日本手話・手話通訳教育の現状と課題
中野 聡子
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2024 年 1 巻 p. 11-23

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抄録

 本研究では、第2言語(L2)手話言語・手話通訳教育の国際的動向をふまえながら、日本の現状と課題を整理し、これらの分野に携わる大学として担うべき役割を検討した。日本では、専任教員を配置し、専門職として求められるレベルへの到達を目指すL2日本手話プログラム、そして一定水準の日本手話スキルを有することが前提となる手話通訳養成プログラムを設置する高等教育機関はわずかである。障害者総合支援法のもと、地域生活支援事業における手話通訳者の派遣と養成が結びついた強固なシステムが存在することで、大学ではL2日本手話・手話通訳の教育に関わる研究や実践が発展しにくかったと考えられる。今後、L2日本手話・手話通訳教育のプロフェッショナリズムを確立してゆくために日本の大学が果たすべき役割として、1)国際的基準に準じた「日本手話の参照枠」の策定、2)L2習得理論、翻訳/通訳理論を取り入れた指導や教材の開発と公開、3)L2日本手話のテスト・評価法の開発、4)高等教育としてのL2日本手話・手話通訳教育プログラムの運用、5)教師養成カリキュラムの開発、6)遠隔教育による地域格差解消の促進、7)L2手話言語教育学・手話通訳学及び関連領域の学術的研究の推進、を取り上げて検討した。

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© 2024 関西学院大学 手話言語研究センター
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