土と微生物
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ハワイ諸島におけるRhizoctonia solaniに対する発病抑止土壌の探索とその抑止機構の解明
小林 紀彦Wen-hsiung Ko
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1983 年 25 巻 p. 1-8

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抄録

1)ハワイ諸島のカワイ,モロカイ,マウイおよびハワイ島から109点の土壌を集め,R. solaniに対する病原菌抑止,発病抑止土壌を選抜したところ,病原菌抑止土壌15点,発病抑止土壌6点が得られた。また発病抑止土壌の特定の島での局在は認められなかった。2)発病抑止土壌はpHが低く(pH3.8〜4.7),土壌を中性に矯正するとその抑止性は完全に消失するが,再度pHを酸性に調整してもその抑止性は回復しなかった。同様な現象は土壌抽出液中でも認められた。3)発病抑止土壌の抽出液中には水溶性Al濃度が発病助長土壌のそれよりも高く,本菌の菌糸生長ならびにNeurospora菌の子のう胞子発芽の抑制が認められることから水溶性Alが発病抑止に関与する一つの要因と思われた。4)発病抑止土壌の微生物密度は糸状菌,放線菌,細菌ともに発病助長土壌に比べ低く,各微生物阻害剤を添加した発病抑止土壌の抑止性は部分的に消失したが完全ではなかった。5)発病助長土壌に発病抑止土壌を混合して抑止性の移行を調べたが,抑止性の移行はなく,発病抑止土壌の混合比の大きい程抑止性が高いという希釈効果のみ認められた。6)高圧殺菌後においても発病抑止性を保持する発病抑止土壌があり,高圧蒸気殺菌した発病助長土壌に発病抑止土壌の微生物を添加しても発病抑止土壌とはならなかった。7)発病を抑制する拮抗微生物として放線菌が得られた。これらのことからR. solaniによるカラシナ立枯病に対するハワイの発病抑止土壌の発病抑止性には土壌pH,拮抗微生物,水溶性Alなどの要因が関与しているものと考えられた。

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